
4.3.2021先日墓参り先でムスカリの花を見て、ふと考える。この色は青なのか紫なのか?「青」にも文字通り色々ある。4月1日に亡くなられたノーベル賞博士の赤﨑勇(あかさきいさむ)氏の偉業を思って「青」を考える。紫がかった鮮やかな青の「群青色」は、無機物つまり鉱石から採る。「群青」(ぐんじょう)の本来の意味は安価なアズライト(藍銅鉱)だが、ラズライト(青金石)を主成分とした高価な「ラピス・ラズリ(瑠璃)」もその色に含む。一方「藍色」はそのまんま植物の「藍」(インディゴ)から色を取る藍染からの名である。染料では他にルリジサやツユクサなどもあるが、植物由来のものは紙や布には中々定着しづらいのが難点。だが短所は長所にもなり、ツユクサの変種のアオバナ(オオボウシバナ)は、その色が水に溶けるため京友禅の下書きに使われたりする。因みに水や油に溶けるものを「染料」、溶けないものは「顔料」と言う。「青」は日本語では、水色、浅葱色、縹(はなだ)色、藍色、瑠璃色、群青色、紺色など、他の原色と同じく数多の表現で使い分ける。英語では単なる「ブルー」以外では、アクアブルー、シアン、ターコイズブルー、コバルトブルー、プルシアンブルー、ネイビー等こちらも名が種々(しゅじゅ)存在する。西洋絵画に於いて「青」は処女性を表し、また模造石(人造石)ではない天然のラピスラズリは金の値段と同等またはそれ以上の価値があったため、宗教画では聖母マリアの衣服の色などにしばしば用いられた。それは「マドンナブルー」とも呼ばれる。また、バロック期の画家フェルメールはラピスラズリの顔料をよく使った為、その青を特に「フェルメールブルー」と呼ぶのは有名だ。そもそも群青の訳語の「ウルトラマリン」とは「はるばる海を越えてやって来た」という意味で、古代では天然のラピスラズリはヨーロッパ周辺ではアフガニスタンのバダフシャーンでしか産出しなかった。それが地中海ルートで海(マリン)を超えて(ウルトラ)やって来たという訳だ。因みにアフガン・バーミヤン渓谷では世界最古の油絵と言われる石窟内壁画も見つかっている。古代ローマの大プリニウスが「天空の破片」と称したラピスラズリは、地球の内部での変成作用で、極めて特殊な条件でしか生まれない石である。遥か東方からヨーロッパに齎(もたら)されたこの魅惑の石から生まれる「青」が、時代を超えたのち、LED(発…